「社員に知られたくない」vs「社員に相談したい」
事業承継を進めるうえで、多くのオーナーが悩むのが社員への情報共有です。
「知られたら不安になって辞めてしまうかもしれない」 「でも、黙っていて後で知られたら信頼を失う」 「主要な幹部社員には相談したいが、どこまで話すべきか」
この悩みは、正直に言って「正解」がありません。ただ、「何も言わない」が最もリスクが高い選択であることは確かです。
社員への情報共有、3段階のアプローチ
ステップ1:まず「キーパーソン」だけに話す
最初に情報を共有すべきは、最も信頼できる幹部社員1〜2名です。
この段階で話す内容:
- 「承継を考え始めた」という事実
- 社員の雇用を最優先に考えていること
- 相手を決める前に意見を聞きたいこと
この段階で話さない内容:
- 具体的な売却価格や交渉状況
- 相手候補の名前や詳細
信頼できる幹部に「共同で承継先を選ぶプロセスに参加してほしい」と伝えることで、幹部が不安を持つどころか、むしろ承継を主体的に支えてくれる存在になる可能性があります。
ステップ2:承継先が決まったら「幹部層」に説明する
買い手の目星がついたら(または決まったら)、幹部社員を対象に説明の場を設けましょう。
この段階で伝える内容:
- なぜ承継を決めたのか(経営者の言葉で)
- 誰に・どのような形で引き継ぐのか
- 雇用・待遇・職場環境がどうなるか
- 元オーナーとして今後どう関わるか
「なぜ秘密にしていたか」の理由も正直に伝えることで、理解を得やすくなります。
ステップ3:契約締結後に「全社員」へ公表
全社員向けの公表は、できる限り契約が確定した後のタイミングが理想です。
理由は「まだ交渉中」の段階で広まると、不確実な情報が飛び交って不安が増大するリスクがあるためです。
公表の内容:
- 事実の説明(いつ、誰に引き継ぐか)
- 雇用継続の確約
- 変わること・変わらないことの具体的な説明
- 質問を受ける場(個別面談など)の設定
社員の不安に、どう向き合うか
承継の情報を知った社員が抱く典型的な不安:
「仕事を失うのではないか」 → 雇用継続の確約を、できれば書面で。言葉だけより具体的な証拠が安心につながります。
「給与・待遇が下がるのではないか」 → 承継直後は現状維持が基本であることを伝える。変更がある場合は誠実に説明を。
「会社の雰囲気が変わるのではないか」 → 新しいオーナーとの対話の機会を早期に設ける。「顔の見える関係」が不安を和らげます。
「自分はこれからどうなるのか」 → できる限り個別に対話する時間を設ける。「全体向けの発表」だけでなく、個人が感じる不安に向き合うことが大切です。
リレーパートナーズが重視すること
リレーパートナーズの承継モデルは、従業員の雇用100%継続を原則としています。
さらに、承継後のプロセスでは:
- 元オーナーへのヒアリングを通じて、社員一人ひとりの状況を把握する
- 可能な範囲で、元オーナーが承継後も会社に残り、社員の橋渡し役になれる
- 経営改善の優先度を「コスト削減よりも成長投資」に置く
「買ったら変えていく」ではなく、「受け継いで、一緒に育てる」という姿勢が基本です。
幹部社員が「承継先選び」に協力してくれる場合
場合によっては、信頼できる幹部社員が「この会社を誰に任せるべきか」について意見を持っていることがあります。
そのような場合、幹部社員の意見を意思決定の参考にすることで、より良い承継先を見つけられる可能性があります。
幹部社員に求めてよいこと:
- 「どんな会社・人物なら安心して会社を預けられると思うか」
- 「買い手候補を実際に会わせたいが、意見を聞かせてほしい」
幹部社員に求めるべきでないこと:
- 価格交渉や法的な判断
- 情報漏洩のリスクがある段階での広範な相談
まとめ
社員への情報共有は段階的に進めることが基本です:
- まず信頼できる幹部1〜2名に話す(相談相手を作る)
- 承継先が見えてきたら幹部層に説明する(主体的な関与を促す)
- 契約確定後に全社員へ公表する(不確実な情報の拡散を防ぐ)
「社員に心配させたくないから黙っている」は善意の行動ですが、長期的には信頼を損なうリスクがあります。段階的に、誠実に情報を共有することが、最終的に社員の安心と信頼につながります。
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