事業承継の基礎

事業承継の準備はいつ始める?プロが教えるタイミングと3つのステップ

2026年7月27日|記事一覧に戻る

事業承継の準備、「いつ始めるか」より「今始める」が大切な理由

「自分はまだ元気だから、もう少し後で考えよう」

20年、30年と会社を育ててきたオーナーが、事業承継についてよく口にする言葉です。そして残念ながら、この「もう少し後で」が最大のリスクになるケースが、今の日本で急増しています。

事業承継の準備は、「何かが起きてから始めるもの」ではありません。余裕があるうちに始めるからこそ、選択肢が広がり、大切な従業員や取引先を守ることができます。

この記事では、事業承継の準備を始める最適なタイミングと、今日から動き始めるための3つの具体的なステップをお伝えします。


事業承継の準備に「早すぎる」はない

平均的な準備期間は3〜5年

中小企業庁の調査によると、事業承継をスムーズに完了させたオーナーの多くが、3年〜5年前から準備を開始しています(中小企業庁「事業承継に関する現状と課題」)。

なぜそれほど時間がかかるのでしょうか。大きく分けると、次の3つの作業が必要だからです。

  1. 会社の現状を整理する(財務・人材・取引先・事業の強みと課題)
  2. 後継者候補または買い手を探す・選ぶ(人探しには時間がかかります)
  3. 移行期間を設ける(引き継いだ後もしばらく伴走が必要)

「老後の準備に10年かける」のと同じように、事業承継も「時間をかけてこそ納得のいく形にできる」ものです。

準備が遅れると何が起きるか

準備が間に合わなかった場合、どのようなことが起きるのでしょうか。実際の現場でよく見られるのは、次のような状況です。

  • 廃業せざるを得なくなる。 後継者が見つかる前に健康上の理由で引退を余儀なくされ、「売りたくても売れない」という状態に陥る。
  • 会社の価値が下がってしまう。 売上や利益が安定している時期を過ぎてから交渉を始めると、企業価値が低く評価される。
  • 従業員が不安を抱えて離職する。 社長の高齢化を感じながらも行き先が見えないと、優秀な社員ほど先に転職してしまう。

後継者不在で廃業した中小企業の多くが「もっと早く準備すれば良かった」と振り返っています。しかし「早くやるべきだった」と気付くのは、いつも後からです。


準備を始める最適なタイミング

「では、いつ始めれば良いのか」という問いに対して、正直に言えば**「思い立ったが吉日」**です。ただ、次のいずれかの状況にあるなら、特に準備を始めることをお勧めします。

健康診断で「要注意」と言われたとき

経営者は、自分の健康を後回しにしがちです。しかし健康上のリスクが具体的になったとき、「会社はどうなるのか」という問いは急に現実のものになります。

万が一のことが起きてからでは、準備する時間も気力もなくなるかもしれません。「まだ元気なうちに」動き始めることが、結果的に会社と従業員を守ることになります。

売上・利益が安定しているとき

「会社の価値」は、財務状況に大きく左右されます。売上が安定していて、利益がしっかり出ている今こそ、企業価値が最も高く評価されるタイミングです。

業績が下がり始めてから「売りたい」と思っても、希望通りの条件で交渉するのは難しくなります。反対に、今の業績が良いうちに準備を始めれば、交渉の主導権を持つことができます。

従業員から将来のことを聞かれ始めたとき

「社長、この会社はこれからどうなるんでしょうか」——従業員からこんな言葉を聞いたことはありませんか。

それは、現場が「先が見えない不安」を感じているサインです。経営者が方向性を示すことで、優秀な社員の離職を防ぎ、会社の価値を維持することにつながります。


3つのステップで始める事業承継準備

「準備を始める」と言っても、何から手をつければいいかわからない——そう感じている方のために、具体的な3つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状の「棚卸し」をする

まず最初にやるべきことは、自分の会社を客観的に把握することです。難しく考える必要はありません。次の3つの視点で現状を書き出してみましょう。

財務面:

  • 過去3年間の売上・利益の推移はどうか
  • 借入残高や保証はどのくらいあるか
  • 経営者個人と会社の財務が混同していないか

人材面:

  • 経営者がいなくても会社が動く仕組みがあるか
  • 後継者候補となりうる人材が社内にいるか
  • 重要な取引先との関係は経営者個人に依存していないか

事業面:

  • 会社の強み・弱みは何か
  • 今後5年間で市場環境はどう変わりそうか
  • 自分がいなくても会社が続けられる理由は何か

このステップは、自己診断です。専門家に相談する前に、自分でざっくりとでも把握しておくことが大切です。

ステップ2:選択肢を知る

事業承継には、いくつかの方法があります。代表的なのは次の4つです。

  1. 親族内承継——子や親族への引き継ぎ
  2. 従業員承継(MBO)——会社を知り尽くした社員への引き継ぎ
  3. 第三者承継(M&A・事業売却)——外部の企業・個人・承継パートナーへの売却
  4. 廃業・清算——会社を閉じる

それぞれにメリット・デメリットがあります。「どれが自分に合っているか」は、会社の状況や経営者の思い、従業員への責任感などによって変わります。

大切なのは、最初からひとつの方法に絞らないこと。まずは選択肢を知ることで、自分の状況に合ったアプローチが見えてきます。

ステップ3:信頼できる相談相手を見つける

現状把握と選択肢の理解ができたら、次は専門家に相談する段階です。

事業承継の準備には、いくつかの専門知識が関わります。税務・財務の面では税理士・公認会計士、法的な契約面では弁護士、そして事業の引き継ぎそのものについては事業承継の専門家・承継パートナーが頼りになります。

ただし、専門家なら誰でも良いわけではありません。大切なのは、「売る・買う」だけでなく、オーナーの想いや従業員への責任をきちんと理解してくれる人を選ぶことです。

まずは顧問税理士に「承継についての相談」を切り出してみることから始めるのが、多くのオーナーにとって最もハードルの低い第一歩です。


「準備した」だけで心が楽になる

事業承継の準備は、決して「会社を手放す」ことではありません。

準備することで、「もし何かあっても、会社と従業員は守られる」という安心感が生まれます。その安心感が、今後の経営にも良い影響を与えます。実際、承継の準備を進めたオーナーの多くが「準備を始めた後、却って経営に集中できるようになった」と語っています。

何十年もかけて育てた会社の行く末を、ぼんやりとした不安のまま抱え続ける必要はありません。一歩ずつ、着実に準備することで、その不安は確かな安心へと変わっていきます。


よくある質問(FAQ)

Q:60代で事業承継の準備を始めるのは遅いですか?

A:遅くはありません。60代での準備開始は、むしろ標準的なタイミングです。ただし、70代に入ってからになると選択肢が狭まることがあるため、気になっているなら今すぐ始めることをお勧めします。「遅すぎた」はありますが、「早すぎた」はありません。

Q:税理士に相談すれば準備を手伝ってもらえますか?

A:はい、顧問税理士は事業承継準備の最初の相談相手として最適です。財務状況の整理や、承継のスキームに関わる税務アドバイスが受けられます。ただし、承継パートナーの選定や事業の引き継ぎプロセスについては、事業承継の専門家に相談することで、より詳しいサポートが得られます。

Q:準備を始めたら、すぐに売却しなければなりませんか?

A:そんなことはありません。準備を始めることと、売却を決断することは別の話です。まずは選択肢を把握し、自分の会社の状態を客観的に知ることが準備の第一歩。「売る・売らない」の判断は、その後ゆっくり考えることができます。


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このガイドでは、

  • 事業承継の4つの選択肢をわかりやすく整理
  • 準備を始めるための具体的なチェックリスト
  • よくある疑問へのシンプルな回答

をコンパクトにまとめました。完全無料、メールアドレスのご登録だけでお読みいただけます。

「備えること」は、大切な人を守ることです。

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