事業承継にかかる費用・税金は?中小企業オーナーが知っておきたい全体像
「事業承継を考えているけれど、いったいどれくらいのお金がかかるのか、まったく見当がつかない」
こうした疑問は、事業承継を検討し始めたオーナーの多くが感じることです。費用や税金の話は複雑に見えますが、大きな流れを把握しておくだけで、判断がずっとしやすくなります。
この記事では、事業承継にかかる主な費用と税金を、承継の方法別に整理してご説明します。細かい計算は専門家に任せるとして、まずは「何にお金がかかるか」の全体像を知ることから始めましょう。
事業承継の費用は「方法」によって大きく変わる
事業承継には大きく分けて、①親族・従業員への承継、②M&A(第三者への売却)、③事業承継パートナーへの委託という方法があります。どの方法を選ぶかによって、かかる費用と税金の種類が変わってきます。
まず全体像を表にまとめます。
| 費用の種類 | 親族・従業員承継 | M&A仲介 | 事業承継パートナー |
|---|---|---|---|
| 仲介・アドバイザリー手数料 | 低〜中 | 高(売上の3〜5%が目安) | 原則なし |
| 贈与税・相続税 | かかる場合あり | かからない(売却扱い) | かからない(売却扱い) |
| 株式譲渡所得税 | かかる場合あり | かかる(約20%) | かかる(約20%) |
| 税理士・弁護士報酬 | 中 | 中〜高 | 低〜中 |
| デューデリジェンス費用 | 低 | 中〜高 | 中 |
以下、それぞれの費用について詳しく説明します。
① 専門家報酬(税理士・弁護士・FAなど)
事業承継のプロセスでは、さまざまな専門家のサポートが必要です。
税理士(顧問税理士) 財務諸表の整備、企業価値の試算、税務面のアドバイスなど。顧問契約の中でカバーされることも多く、追加費用がかからないケースもあります。
M&A仲介業者・FA(フィナンシャルアドバイザー) M&Aを仲介する業者を使う場合、**着手金(50〜100万円程度)+成功報酬(売買価格の3〜5%)**が一般的です。売買価格が1億円なら成功報酬だけで300〜500万円になります。
弁護士 契約書の作成・レビュー、株式譲渡契約の法的整備など。案件の複雑さにより、50〜200万円程度が目安です。
② M&A仲介手数料の「レーマン方式」とは
M&A仲介では**レーマン方式(Lehman Formula)**という計算方法がよく使われます。
- 取引金額5億円以下の部分:5%
- 5〜10億円の部分:4%
- 10〜50億円の部分:3%
たとえば、3億円で売却する場合、成功報酬は3億円×5%=1,500万円になります。
これは仲介業者の報酬であり、オーナー(売り手)側が負担するのが一般的です。
一方、**事業承継パートナー(直接買取型)**は、仲介ではなく自社で直接買い取るため、この種の仲介手数料はかかりません。
③ 税金——最も注意が必要なポイント
事業承継に関わる税金は、方法によって種類が大きく異なります。
A. 株式を「売却」する場合(M&A・第三者承継)
会社の株式を売却して得た利益(売却価格 − 取得費用)は、譲渡所得として課税されます。税率は原則約20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)。
例:取得費100万円の株式を1億円で売却した場合 → 課税対象:9,900万円 × 20.315% ≒ 約2,011万円の税負担
この税金は、売却益から自動的に引かれるイメージで計算しておくと安心です。
B. 株式を「贈与・相続」する場合(親族内承継)
子や親族に株式を譲る場合、贈与税または相続税がかかります。特に中小企業の株式は「非上場株式」として評価されますが、会社の収益力や純資産によっては思った以上に高い評価額になることがあります。
ただし、一定の条件を満たせば**事業承継税制(特例措置)**を活用することで、贈与税・相続税の納税を猶予・免除できる制度があります。詳しくは顧問税理士にご確認ください。
C. 「事業譲渡」(資産の売却)の場合
会社ごとではなく、事業や資産を個別に売却する「事業譲渡」の場合、法人として売却益に法人税がかかります。消費税の課税対象になる資産もあるため、スキームの設計が重要です。
④ デューデリジェンス(DD)の費用
DDとは、買い手が会社の財務・法務・ビジネスの状態を詳しく調査するプロセスです。通常、買い手側が費用を負担しますが、案件の規模や複雑さによって異なります。
売り手側で事前に「ビジネスDD」(自社の整備)を行う場合、税理士や弁護士に依頼すると50〜150万円程度かかることがあります。
「費用を抑える」ために知っておきたいこと
費用を最小限にするためのポイントをいくつか挙げます。
1. 早めに準備を始める 時間的な余裕があると、選択肢が増え、交渉力も高まります。急いで進めると不利な条件を飲まざるを得ないことがあります。
2. 仲介手数料のかからないスキームも検討する 事業承継パートナー(直接買取型)は、仲介手数料が発生しないため、同じ売却価格でも手取り額が増える場合があります。
3. 事業承継税制を活用する 親族への承継を検討しているなら、特例事業承継税制の活用で税負担を大幅に軽減できる可能性があります。期限や要件があるため、早めに税理士と相談することが重要です。
4. 「財務の整理」を先に済ませておく 買い手はDD(調査)を通じて財務の不明点を値引き交渉に使います。事前に財務諸表を整理しておくことで、適正価格での売却につながります。
よくある質問(FAQ)
Q:事業承継にかかる費用の総額はどれくらいですか?
方法や規模により大きく異なりますが、M&Aを使った場合は「仲介手数料+税金+専門家報酬」で売却額の20〜30%程度がかかるケースもあります。事業承継パートナーを使う場合は仲介手数料がなく、比較的コストを抑えられます。
Q:税金はいつ払うのですか?
株式譲渡所得税は、売却した年の翌年3月15日までの確定申告で納付します。贈与税は贈与を受けた年の翌年3月15日まで。相続税は相続が発生してから10ヶ月以内が原則です。
Q:顧問税理士に頼めばすべてカバーしてもらえますか?
顧問税理士は税務面の相談ができますが、M&Aや事業承継の専門知識は持っていない方もいます。承継の全体プロセスを把握した上で、必要に応じてM&A専門家や事業承継パートナーへの橋渡しを依頼することが現実的です。
費用より先に「何を守りたいか」を決める
費用や税金は、確かに重要な要素です。しかし、どの方法が「最も手取りが多いか」だけで判断すると、後で後悔することがあります。
従業員の雇用を守りたいのか、会社のブランドを残したいのか、それとも早く決着をつけて次のステージへ進みたいのか——何を優先するかによって、最適な方法は変わります。
費用の見通しを把握した上で、まずは選択肢を広げることから始めてみてください。
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